レティアは小さな一歩を踏み出し、ルシアスの少し上目遣いの視線を捉えながら、にこっと笑った。「わたしね、お友達になるのってすごく楽しいと思うの。だから……きみとも、いっぱいお話ししたいなぁ!」
ルシアスはその笑顔に戸惑いながらも、ほんの少しだけ肩の力を抜いたように見えた。いつものムスッとした顔には変わりなかったが、ほんの一瞬、口元がわずかに緩んだような気がした。「……あんた、変なやつだね。でも、まあ……ちょっとなら、付き合ってあげてもいいけど。」
その言葉を聞いたレティアは、嬉しそうに手を叩いて笑う。「やった!きみ、やっぱりいい人だね!」と無邪気に喜ぶその姿に、ルシアスは思わずため息をつきつつも、心の中に温かい何かが灯るのを感じた。
森の中を彩るように、レティアは虹色の小動物たちと無邪気に追いかけっこを楽しんでいた最中だったのを完全に忘れていた。その笑顔には不安の影などなく、むしろ無邪気さで溢れていた。しかし、彼女が遊んでいた相手が「暗闇の支配者・ノクス」の群れであることを知る者は、思わず声を失ってしまうだろう。
突然、地を揺るがすような足音が響いた。ノクスの群れが一斉にレティアを追いかけ、猛スピードで駆け寄ってくる。漆黒の毛並みには紫の模様が走り、銀色に輝く目は獲物を捕らえようとする鋭い光を放っていた。口から覗く牙はまるで剣のように鋭く、そこから漏れる唸り声はまるで森を脅かす嵐そのもの。瘴気が彼らの足元を揺らめき、枝葉を枯らしながら彼女に迫っていた。
「な、な、な……何あれ!? あんなの、ムリムリムリィィィーーっ!」 ルシアスはノクスたちの圧倒的な威圧感に完全に飲み込まれ、その場で硬直した。その目は恐怖に見開かれ、体は小刻みに震えていた。気を取り直すように杖を持ち直したものの、手が震えて力が入らず、呪文を唱えることすらできない。
一方、追いかけられているはずのレティアは、彼らを背後に感じながらも振り返ってにっこりと微笑んだ。 「あ、おいつかれちゃったねぇ……あはは♪」 その無邪気で平然とした態度は、ノクスたちの恐ろしさとは正反対で、まるで鬼ごっこの延長のようだった。
「何言ってるの、レティアーッ!? あの狼たち、完全に危ないやつらだよ! 今すぐ逃げないとーー!」 ルシアスはパニックになりながら、彼女に駆け寄ると強引に抱きかかえた。その顔には冷や汗が流れ、全身で震えていた。
「え、ちょっとルシアス……急に抱っこなんて、びっくりしちゃうよぉ~! あははっ♪」 まるで事態の緊迫感が分かっていないかのように、レティアは楽しそうに笑みを浮かべていた。その笑顔を横目に、ルシアスは全力で森の奥深くへと走り出した。
森の中を駆けるルシアスの心には、強い焦りと警戒が渦巻いていた。彼女の腕の中には無邪気な笑顔を浮かべるレティアが抱えられている。レティアは、状況にまるで動じた様子もなく、ルシアスを見上げながら話しかけた。 「ん? いい子たちだよ?」
その言葉にルシアスは目を丸くして息を飲んだ。『いい子たち? あれが? あの化け物が!?』 ルシアスの目に映るノクスたちはどう見ても「いい子」などではなかった。漆黒の毛並みは紫の光を帯び、全身に瘴気を纏いながら森を駆けるその姿は、凶暴で恐ろしい化け物そのものだった。銀色に輝く瞳は冷徹な捕食者の光を放ち、地面を切り裂くかのような鋭い爪の音が後方から響き渡り、ルシアスの緊張を一層煽っていた。
「いい子なわけないでしょっ! あれが! あんな恐ろしいオオカミがいい子なわけないじゃない!」 ルシアスは激しい口調で叫び、強くレティアを抱きかかえながら足を速めた。冷たい汗が額を伝い、震える脚を必死に動かしながら、彼女は逃げ道を探していた。咆哮と共に近づいてくるノクスの群れが、まるで悪夢のように迫っていた。
一方、レティアはまったく慌てた様子もなく、平然とした笑顔を浮かべていた。「だいじょうぶだよ、ルシアス。あの子たち、ただ遊んでるだけだもん!」
「ただ遊んでる? あんたねぇ、あれがただ遊んでるなら私は魔王にでもなれるわよ!」 ルシアスは鋭い眼差しをノクスに送りながら、レティアに強気な口調で反論した。しかしその一方で、彼女の内心は必死だった。状況を冷静に見極めながらも、レティアを守るため全力で走るルシアスには、レティアの楽観的な態度が一層の苛立ちをもたらしていた。
「いい加減にしてよ、レティア! あんた、危機感ってものがないの!? 今襲われてるんだから!大変なんだから!」 ルシアスは声を張り上げながら、それでも足を止めることなく駆け続けた。背後から響く咆哮と迫りくる瘴気が、彼女の強い意志を試しているようだった。
「もぉ……オオカミさん。とまってぇ!」レティアが柔らかい声でそう指示すると、それまで勢いよく駆けていたノクスたちはまるで魔法にかけられたように、その場で大人しく立ち止まった。漆黒の毛並みが微かに揺れ、銀色の瞳は鋭さを失い、レティアをじっと見つめていた。
「あ、あんただって……あんなスゴイ魔物を手懐けてるじゃないの! むしろ、あんたの方がスゴイんじゃないの!」 ルシアスは少しムキになりながらも、褒め言葉を口にした。その顔にはほんのりとした赤みが差していた。 すると、レティアが人懐っこい仕草でルシアスの顔を覗き込みながら囁くように言った。「あのね、ルーシーが呼んでくれるなら、わたしも“レティー”って呼んでくれると嬉しいかなぁ……」「は? 私たち、さっき出会ったばっかりじゃない! そんな仲じゃないでしょ!」 ルシアスは一瞬険しい表情を浮かべるも、レティアの無邪気な視線に圧倒される。そしてため息をつきながら少しおどけたように言った。「……あんたがどうしてもっていうなら……仕方ないわね、れ、レティー。」 その言葉にレティアは嬉しそうに笑みを浮かべ、ルシアスの反応をしばらく楽しむようにじっと見つめていた。「な、なに見てんのよ! あんたなんかに構われたくないんだからね!」 ルーシーは強い口調で言い放ちながらも、どこか照れくさそうに顔を逸らした。その態度に、レティアはまったく動じることなく、にっこりと笑顔を浮かべて返す。「うふふ、そんなに怒らなくてもいいのに。お友達になろうよ!」 その無邪気な言葉に、ルーシーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにため息をつきながら返事をした。「もお、仕方ないわね。レティーがそこまで言うなら……べつに良いわよ。お友だちかぁ……」 そう言いながら、ルーシーはふと微笑んだ。その笑顔はとても可愛らしく、思わずこちらまで笑顔になってしまうような魅力を感じさせた。「うん。おともだちぃ〜」 レティアが小さく呟いたその言葉は、隣に座っていたルーシーの耳にしっかり届いていた。「は? え!? ……う、うるさいわよっ。喜んでなんかいないんだからね! ふんっ」 ルーシーはそっぽを向きながらも、
ルシアスはその異様な光景に足を止め、恐る恐る振り返った。彼女の目に映ったのは、レティアの足元に座り込むような態勢を取るノクスたち。さっきまで彼らの凶暴な姿に怯えていたはずなのに、今はまるで従順な飼い犬のように振る舞っている。その場の状況が全く理解できず、ルシアスは呆然とした表情を浮かべた。「……な、なにこれ!? なんで、こんなことになってるの!?」ルシアスは目を見開いたまま、声を絞り出すように言った。その言葉には恐れと混乱、そして少しの苛立ちが混じっていた。 一方で、レティアはその緊迫した空気を全く意に介さず、無邪気な笑顔を浮かべた。「ほら、オオカミさんたちはいい子なの。ね、いい子でしょ?」彼女がそう言うと、ノクスたちは尻尾を振るような仕草を見せ、レティアにさらに近寄った。「いい子!? あれが!? どうしてこんなことになってるのか、ちゃんと説明してよ!」ルシアスは声を張り上げるも、ノクスたちに対する恐怖心が抜けきらず、その場で固まっている。彼女の強気な口調とは裏腹に、呆然とした姿はどこか無力感を醸し出していた。 レティアはそんな彼女を見て軽く首を傾げながら、笑顔をキープしていた。「えっとねぇ、オオカミさんたち、わたしと遊んでるだけなんだよぉ♪」あまりにもマイペースな説明に、ルシアスはますます混乱を深める。「遊んでる!? あれが遊んでるっていうの!? 信じられない……完全に理解不能だわ……」ルシアスは頭を抱えながらその場に立ち尽くし、まだ状況を飲み込めずにいる自分を必死に奮い立たせようとしていた。「あのね、わたしたち、ただ追いかけっこをしていただけなのっ♪」 レティアはにぱぁっと無邪気な笑顔を浮かべながら、ルシアスを見上げて言った。その天真爛漫な様子に、ルシアスは一瞬言葉を失う。「あ、あっそぅ……」 納得できないという表情で、ルシアスはぷいっと顔を逸らしてつぶやいた。しかし事実として、ノクスたちはレティアの指示に従いきちんと立ち止まり、待機していた。その様子を見て、ルシアスは複雑な心情に陥る。「……あ、そうか。レティア、あんたテイマーだったのね。それで納得できるわ。うん。きっとそうね……
レティアは小さな一歩を踏み出し、ルシアスの少し上目遣いの視線を捉えながら、にこっと笑った。「わたしね、お友達になるのってすごく楽しいと思うの。だから……きみとも、いっぱいお話ししたいなぁ!」 ルシアスはその笑顔に戸惑いながらも、ほんの少しだけ肩の力を抜いたように見えた。いつものムスッとした顔には変わりなかったが、ほんの一瞬、口元がわずかに緩んだような気がした。「……あんた、変なやつだね。でも、まあ……ちょっとなら、付き合ってあげてもいいけど。」 その言葉を聞いたレティアは、嬉しそうに手を叩いて笑う。「やった!きみ、やっぱりいい人だね!」と無邪気に喜ぶその姿に、ルシアスは思わずため息をつきつつも、心の中に温かい何かが灯るのを感じた。 森の中を彩るように、レティアは虹色の小動物たちと無邪気に追いかけっこを楽しんでいた最中だったのを完全に忘れていた。その笑顔には不安の影などなく、むしろ無邪気さで溢れていた。しかし、彼女が遊んでいた相手が「暗闇の支配者・ノクス」の群れであることを知る者は、思わず声を失ってしまうだろう。 突然、地を揺るがすような足音が響いた。ノクスの群れが一斉にレティアを追いかけ、猛スピードで駆け寄ってくる。漆黒の毛並みには紫の模様が走り、銀色に輝く目は獲物を捕らえようとする鋭い光を放っていた。口から覗く牙はまるで剣のように鋭く、そこから漏れる唸り声はまるで森を脅かす嵐そのもの。瘴気が彼らの足元を揺らめき、枝葉を枯らしながら彼女に迫っていた。「な、な、な……何あれ!? あんなの、ムリムリムリィィィーーっ!」 ルシアスはノクスたちの圧倒的な威圧感に完全に飲み込まれ、その場で硬直した。その目は恐怖に見開かれ、体は小刻みに震えていた。気を取り直すように杖を持ち直したものの、手が震えて力が入らず、呪文を唱えることすらできない。 一方、追いかけられているはずのレティアは、彼らを背後に感じながらも振り返ってにっこりと微笑んだ。 「あ、おいつかれちゃったねぇ……あはは♪」 その無邪気で平然とした態度は、ノクスたちの恐ろしさとは正反対で、まるで鬼ごっこの延長のようだった。「何言ってるの、レティアーッ!? あの狼たち、完全に危ないやつらだよ! 今すぐ逃げないとーー!」 ルシアスはパニックになりながら、彼女に駆け寄ると強引に抱きかかえた。その顔には冷や汗が流れ
「オオカミの臭いでレティアが顔をしかめつつ、甘えたがるオオカミたちを受け入れた。彼女の心には、彼らの傷ついた姿を見た時の悲しみが薄れ、ほんの少し喜びが灯る。 その瞬間、レティアの魔法の能力が新たな進化を遂げていた。魔法の最上位魔法とスキルが結びつき、『具現化』という新たなスキルが誕生していたのだ。レティアの魔法は、この世界に存在する全てのものを扱えるようになり、本人が意識することなくスキルが補完し、オリジナルの魔法を自在に作り出せる能力へと変わっていた。 オオカミたちをキレイにしたいと願った瞬間、彼女のスキルはその思いに応じ、新たな浄化の魔法を作り出した。オオカミたちの体が虹色の光に包まれ、汚れや臭いが浄化され、仄かな良い匂いが漂うようになった。「わぁ……きれいになってるね! うん、臭くなーい!」 レティアは嬉しそうにオオカミたちを撫でた。彼らはさらに甘える仕草を見せ、和やかな雰囲気が広がった。その後、彼女はオオカミたちと、追いかけっこの続きを楽しんだ。 レティアは虹色の能力と心を通わせた動物たちによって、意思疎通ができるようになっていた。新たに手に入れたその力を活かし、オオカミたちとも遊びを楽しむ日々が始まった。ある日、彼女は笑顔でオオカミたちに無邪気な提案をした。「オオカミさん、オオカミさん。次はねー、かくれんぼしよー♪ オオカミさんが見つけてねー!」 その提案を聞いたオオカミたちは、得意げな表情で頷き、森での遊びに意欲を見せた。嗅覚、視覚、聴覚が発達しているオオカミにとって、小動物を探し出すことは容易なはずだった。 しかし、レティアの『虹色の能力』が、その状況を複雑にしていた。彼女の能力は万能で、小動物たちを不可視化し、臭いや物音を完全に消すことができた。レティアが作り出した小動物たちは命令がなければ動くこともなく、音を立てることがなかったため、オオカミたちにとっては手強い挑戦となった。 オオカミたちは必死になり、森中を動き
「攻撃魔法は封印したいなぁ……。驚いたときにはバリアのほうがいいよね。防御なら……被害が出なさそうだしぃ。」 レティアはそう独り言をつぶやきながら、自分を包む膜をイメージした。その瞬間、体全体が虹色に輝く膜に覆われた。淡く光る膜は、まるで大きなシャボン玉に包まれているようだった。「なにこれー? こんなので攻撃から守ってくれるのかなぁ? シャボン玉みたいだけど……。でも、とってもきれいだなぁ……♪」 レティアは不思議そうに手を伸ばし、虹色の輝きに夢中になりながら手のひらを動かした。さらに彼女は好奇心いっぱいに、小さな球体をイメージしてみる。すると、その手の中には小さな虹色の球体がぽっと浮かび上がった。「わぁ……可愛くて、キラキラ輝いてキレイ♪ イメージ通りに動くんだねー。すごーい♪」 彼女は嬉しそうに笑いながら、球体を操り始める。軽やかに宙を舞う球体は、レティアの思い通りに形を変え、ふわふわと浮かびながら踊るように動いた。 彼女は巨大な岩の粉々になった残骸に腰掛け、その虹色のバリアを楽しそうに動かし始めた。最初は手のひらで転がすように動かしていたが、だんだんと楽しさが増していき、森の中で出会った可愛い動物たちをイメージして虹色の形を作り出してみた。うさぎのような耳を持つ動物や、ふっくらとした小鳥のような姿――それらはレティアのイメージで自由自在に形を変え、森の中にひそかな夢の世界を作り出していった。 レティアのイメージ力はますます鮮明に広がり、動物たちの毛並みや表情までリアルに、まるで本物のように描かれるようになっていた。もはや生き物にしか見えないほど精巧で、虹色に輝くその動物たちはまるで魔法が生命を与えたかのようだった。「うわぁ……すごーい♪ お友達が作れちゃったぁー! ねぇ、ねぇ……いっしょにあそぼっ!」 レティアは作り出した動物たちに話しかけると、
「ふっふふ……レティーは、レベルはいくつになったんだい?」じぃーじが優しく微笑みながら問いかけた。 しかしレティアは首を傾げるばかりだった。何しろ、レベルというものの確認方法が分からなかったのだ。「ん? レベルは、どーやってかくにんするの?」彼女は可愛らしく首を傾げながら尋ねる。「ステータスの確認と強く思えば、頭の中で確認できるんじゃよ。」じぃーじは穏やかな声で教えてくれた。 レティアはじぃーじの教えを受け、幼いながらもステータスを確認してみることにした。しかし、その結果に彼女は思わず焦った。先ほど聞いた村人や冒険者のレベルと比べて、あまりにもかけ離れていたのだ。自分の耳がおかしいのか、それとも聞き間違いなのかと疑い始める。 慌てた様子を隠すように、レティアは気を取り直してじぃーじに尋ねる。「ねぇ……じぃーじ、レベル……どれくらい上げれば冒険者で活躍できるのかなぁ?」彼女は冒険者の基準を探るふりをして、実際の数字を確認したかった。 じぃーじは少し考え込んでから答えた。「そうさなぁ……15もあれば活躍できるじゃろうなぁ……」 その答えを聞き、聞き間違いではないことを確信したレティアは、渋々口を開いて言った。「えっと……わたし、3になったみたい……」小さな声で呟くように伝えた。 ばぁーばは驚いた顔をしながらも心配そうに声をかける。「3かい……随分無理して倒したんだね。ケガをしないように注意するんだよ。」 すると、じぃーじは朗らかに笑いながらばぁーばに話しかけた。「あはは……レティーは立派な魔法使いじゃぞ? 魔法が得意な子じゃ。そ